照明の電球色と昼白色の違いは?使い分けのポイント


建築設計において、構造や素材、動線などはもちろん重要ですが、その空間で人がどのように感じ、過ごすかを最終的に決定づけるポイントの一つが「照明」です。特に、光源が持つ「光の色」は、空間の雰囲気や機能性を大きく左右する力を持っています。単に明るさを確保するだけでなく、光の色を適切に使い分けることで、空間はより豊かで意味のあるものになります。照明の中でも光源の「電球色」と「昼白色」の役割の違いに焦点を当て、その効果的な使い分けについて掘り下げていきます。

光の色が空間にもたらす効果

照明が持つ光の色は、人の心理に深く作用し、空間全体の印象を決定づけます。この光の色を客観的な指標で理解することが、思い描いた空間を創造するための第一歩となります。ここでは、空間の印象を左右する「色温度」と、色彩の再現性に関わる「演色性」という、二つの重要な指標について解説します。

空間の印象を決定づける「色温度」とは

光の色合いを示す尺度が「色温度」です。単位は「K(ケルビン)」で表されます。ろうそくの炎のような赤みがかった光ほど色温度の数値は低く、青白い光になるほど数値は高くなるのが特徴です。照明計画においては、この色温度をコントロールすることで、空間に特定の雰囲気、例えば「くつろぎ」や「集中」といった印象を与えることができます。

電球色

色温度がおおよそ2700K~3000K程度の、暖かみのあるオレンジ色の光が電球色です。夕日を彷彿とさせるその光は、人の心身をリラックスさせる効果があると言われています。副交感神経を優位にし、落ち着いた雰囲気を醸成するため、くつろぎを目的とした空間に最適。また、暖色系の光は料理の彩りを豊かに見せ、食欲を増進させる効果も期待できます。

昼白色

色温度がおおよそ5000K前後の、日中の太陽光に最も近いとされる自然な光が昼白色です。爽やかで活動的な印象を与え、空間を生き生きと見せる効果があります。脳を覚醒させ、集中力を高める作用があるため、作業や学習を行う空間に適しています。また、物の色が自然に見えるため、色を正確に判断する必要がある場面でも重宝される光です。

色彩の再現性を左右する「演色性」

照明計画において色温度と同様に重要なのが、「演色性」です。これは、その照明で物体を照らしたときに、自然光(太陽光)の下で見た場合の色をどの程度忠実に再現できるかを示す指標です。平均演色評価数「Ra」という単位で表され、100に近いほど演色性が高い(色の再現性が良い)と評価されます。Ra80以上が一つの基準とされており、特に色彩の正確性が求められる美術館やアパレル店舗、医療施設などでは、Ra90以上の高演色な照明が不可欠です。

【空間別】電球色と昼白色の戦略的な使い分けのポイント

光の基本的な特性を理解した上で、次に重要となるのが、実際の空間でそれらをどう使い分けるかという実践的な視点です。空間の用途や目的を深く理解し、光の色を戦略的に配置することが、設計の質を大きく向上させます。

居住空間における光のゾーニング

住まいは、生活における多様なシーンの集合体です。そのため、一つの住宅内でもエリアごとに光の色を使い分ける「光のゾーニング」という考え方が重要になります。

くつろぎの場

家族が集い、一日の疲れを癒すリビングやダイニング、そして安らかな眠りへと誘う寝室。これらの空間の主役は、リラックス効果の高い電球色です。空間全体を落ち着いた明るさで満たし、必要に応じてフロアスタンドやブラケットライトで光だまりをつくることで、陰影のある上質な空間が生まれます。

機能性が求められる作業の場

調理を行うキッチン、読書や仕事に集中する書斎、あるいは子供が学習するスペースでは、機能性が優先されます。手元をはっきりと照らし、集中力を維持させる昼白色が最適です。特にキッチンでは、食材の色を正確に確認するためにも、自然な光である昼白色がおすすめです。

商業・公共空間における光の演出

商業施設や公共施設における照明計画は、ブランドイメージの発信や利用者の行動喚起に直結する重要なデザイン要素です。ターゲットとする顧客層や、施設が提供したい価値感に合わせて光を演出する必要があります。

飲食・宿泊施設

レストランやカフェ、ホテルの客室やラウンジでは、非日常的なくつろぎの空間を演出することが求められます。料理を美味しそうに見せ、顧客がリラックスして過ごせるよう、電球色を主体とした照明計画が基本です。間接照明を効果的に用いることで、より上質で落ち着きのある雰囲気を創出できます。

オフィス・教育施設

知的生産性の向上が求められるオフィスや、集中して学習に取り組む教育施設では、覚醒効果のある昼白色が基本です。空間全体を均一に明るく照らし、眠気を抑制することで、効率的で快適な執務・学習環境をサポートします。近年では、時間帯によって色温度を変化させる調光調色システムも導入されています。

物販・医療施設

アパレルショップや化粧品売り場など、商品の色を顧客に正確に伝えたい物販店では、演色性の高い昼白色が不可欠です。また、清潔感と信頼性が重視されるクリニックや病院においても、クリアで自然な光の昼白色が広く採用されています。空間の用途に合わせ、最適なRa値を選定することが必要です。

まとめ

照明の色は、空間の印象や快適性を決める、設計における重要な要素です。
暖色系の「電球色」は人に安らぎや落ち着きを与え、自然光に近い「昼白色」は集中しやすく活動的な雰囲気をつくりだします。
照明計画の目的とは、こうした光が持つ心理的な効果を理解し、その空間の用途に最もふさわしい環境を創り出すことにあります。この光の選択が、空間の機能性と価値を最終的に決定づけるのです。